アルバイトで掴んだ、日本で働くコツ 必要なのは“空気を読む”チカラ

ユ・ヨウ(中国出身)
留学先
上智大学 文学部 新聞学部
留学期間
2年10ヶ月(2015年1月〜)

日本と中国のニュースを比較するようになった

ユさんはなぜ日本語を学ぼうと思ったのですか?

ユ・ヨウ(以下、ユ): それには歴史的な関係があります。私の祖父は日中戦争の時に通訳をやっていたんです。祖父は中国人ですが満州国にいたこともあって、子供の頃からずっと日本語を学んでいて。

おじいさまの影響なんですね。直接教わっていたのですか?

ユ: 実際に会ったことはないんです。父からたくさん話を聞かされていて。祖父が遺した日記や書類も家にいっぱいあって、結構見ていたんです。日本から届いた新聞なんかもどっさり置いてありました。

それは貴重な文化財ですよね。

ユ: そうですね。

それで大人になって留学してみようかなと?

ユ: はい。子供の頃からずっと日本語に触れていると、どうしても国に興味をもつようになるんですね。

実際日本に来てみて、中国で見聞きしていたことと違うなと感じることはありますか?

ユ: 僕は日本に来てからずっと東京なので、生活面に関しては想像した以上に便利でした。中国でも日本が発展した国だということは報道していましたが、中国は4000年の歴史を誇っているので、発展を遂げたと言ってもそれほどではないんじゃないかと思っていました。実際に来て、考えていたよりも上でしたね。

新聞学部で過去に受けた授業の中で印象に残っている授業はありますか?

ユ: ご存知かもしれませんが、報道の自由というのは世界各国によって国際的にランク付けされています。

知らないです!教えてください。

ユ: 日本に来る前は、基本的には中国の国営テレビのニュースしか見ていませんでした。それしか見ていないから心から信用していたんですね、ここで報道されているのは間違いなく真実だ、というふうに。

はい、すごく面白いです。

ユ:日本に来て、日本語を勉強するのに教材のような感じで日本のニュースを見るようになったんですが、どうしても中国のニュースと日本のニュースを比較してしまうんです。同じ内容でも全然違う観点で報道されていたりします。

どちらが本当なのか、疑問を持つことはありませんか?

ユ:一時的にはありました、1年生の時には。どうなんですかね。もう触れちゃいけない問題なんですが、例えば尖閣諸島のこと、どちらが正しくてどちらが間違いかというよりも、自分なりに考えたんですね。国家同士というのは、人間関係のように利益を求めず純粋な関係を続けていけるようなものではなくて、どちらかというと経済が優先されるんです。経済関係があるからこその国家友好関係というか。

よくわかります。

ユ:国家だけでなく地域も同じだと思います。

私とユさんの間に友情が芽生えることは簡単でも、国同士だと歴史的問題を含め、経済と引き離すことは難しいということですよね。

ユ:そうです。

それを1年生の時に思ったんですか?

ユ:1年生の頃は迷っていたんです。どちらが正しいのか、正しくないのか。

では、この2年くらいかけてそういう考えに達したと。

ユ:そうですね、解決策として一番早いというか、どちらの国民にも被害が及ばずにすんなり解決するためには、経済の関係を深めていくのがベストではないかと考えました。

それは実際に可能だと思います?

ユ:時間をかけていけば、どの道そうなっていくんじゃないかと考えます。北朝鮮がロケットを発射したりするじゃないですか。それも、これ以上の深刻な状況にならない限り、現状のバランスを維持したままやっていけば、みんな経済の同じパイプに結ばれていって、戦争にもならないんじゃないかと思います。

 

“空気を読む”ということ

日本に来て困ったことや不便なこと、日本人の苦手なところはありますか?

ユ: 消費者として訪れる日本は完璧です。でも、働く側になると日本人は異変するというか、全く違う感じになっちゃいますね。お金を払ってサービスしてもらう時と、お金をもらう時とでは180度違います。

アルバイトか何かで感じられたんですか?

ユ: はい。最初に焼肉屋さんでアルバイトしたときに。
働く前に視察のつもりで食べに行ったんです。みんな親切で優しそうな感じだったのですが、実際に働いてみたらちょっと違うんですね。「これがこの前サービスしてくれた店員?」「教える側になるとどうしてそこまで?」って(笑)

ちょっと乱暴な感じ?

ユ: そうですね(笑)。
まぁ僕はいいとして、本人は疲れるんじゃないかと思うんですよ、そこまで自分の本当の感情を隠して働いていることに。バランスを取ったままでいいんじゃないかなって思います。

アルバイトで大変な経験をしても日本で働きたいと思いますか?

ユ: そうですね、働いているうちにコツを掴んだので。
最初はどうしても言葉がうまく相手に伝わらず、雇う側からしても厳しい態度を取るというか、イライラしちゃうっていう部分がありまして。要するに言葉の壁を乗り越えることが大前提として、それから相手の文化、日本人はこういう感じですよ、というのを理解した方がいい。

ユさんから見て、日本人はどんな感じですか?

ユ: できる人を100%評価する。もしできなければ、生きるということが難しい。仲間から外されるような。

小・中学生にはいじめとか…。

ユ: 社会に出てもそうですね。空気を読めないとダメというか。でも疲れるんですよ。

“空気を読む”と言う言葉のニュアンスを掴むのって大変じゃなかったですか?

ユ: 大変ですよ。そもそもその概念がない国が多いとおもいます。

どうやってその概念を認識したんですか?

ユ: う〜ん、経験ですね。はじめは意味が分からず、苦労しながら身につけた感じです。

すべての人が空気を読めるわけではないですよね。いままでいろんな中国の方に会ってきたけど、ユさんはフラットな感じがします。いまの若い世代の方は、ユさんみたいな方が多いんですか?

ユ: かなり空気を読める人が多いと思いますね。いまバリバリ働いている世代よりは、若い世代の方が断然に。

それはどうしてでしょうか?

ユ:これも歴史的な関係があって、中国には“文化大革命時代”というのが一時的にありまして、その年代に生まれた人は教育をあまり受けていないんですよ。つまり、いま国をリードしている方々、バリバリ働いている方、企業をリードしている方たちですね。経験はあるけど知識が足りない、一般教養を身につけていないという方が多いんです。だから日本に旅行する人は、つまり、いま一番稼いでいる中国人ですが、マナーが悪いとされていますよね。それも歴史的な理由があってこその話なんです。そんなに教育を受けていないですから、そういった概念がないというか。日本人の立場からすると、お金はあるけれど空気が読めない、っていう風になっちゃいますね。僕たちがバリバリ働く世代になれば完全にイメージが変わるだろうと僕は思っています。

最初に乗り越えるべき壁はグループディスカッション

日本で就職活動をしていて、心配なこと、不安なことはありますか?

ユ: 雇う側としての日本企業が、国籍で決断してしまうことがいちばんの心配ですね。同じレベルの中国人と日本人、どちらを採用するかというとやっぱり日本人でしょ、という考えがあります。

逆に武器になることもありますよね?

ユ: 面接や説明会で企業側の話もいっぱい聞きましたが、アジア進出を視野に入れている企業が多数というか、大手企業のほとんどはそれを求めていて、アジアの国出身の人たちは大丈夫なんじゃないかなとは思いました。

ユさんはどういった企業に就職したいですか?

ユ: とにかく大きな貿易に関わりたいというのがあって、第一志望は総合商社です。

順調ですか?

ユ: 順調とは言えないですね。インターンシップですら半分以上の人は落とされていますので。企業研究や調査をしながら最終面接に向かって頑張って行きたいと考えています。

実際にインターンはどこを受けましたか?

ユ: 昨日も参加したばかりですが、商社ではなくて証券会社です。ワンデイのインターンシップでした。日本人の学生とチームを組んで、企業側から課されたテーマについて考え、提案する。ものを作ってプレゼンテーションするような形で発表します。

グループディスカッションや面接のようなことも?

ユ: そうですね。それもかなりの難関というか、乗り越えなくちゃいけない壁ですよ。

そうですよね、日本の文化的背景と言語と、それこそ空気を読めないと。

ユ: そうです、難しいです。バイトよりかなり難しい。限られた時間で自分をアピールしなきゃいけませんから。

しかも、提案する中でアピールもしなきゃいけないんですもんね。

ユ:話し合っている日本の方たちの隙を狙って、すっと入っていくみたいな。それでようやくチームの1ピースになれる。タイミングを逃すと完璧なチームができあがってしまって、入る隙がなくなってしまうと思うんです。

昨日はなんとかなりました?

ユ:なりました。

インターンも含め、就職活動の情報はどうやって得ていますか?

ユ:最初は先輩からです。4年生の留学生の先輩が就活に苦労している姿を見ていて「あぁ、自分もいまのうちにやらないと間に合わないんじゃないか」と思って。いろいろ対策を練って、何を克服しないといけないかを考えて。
最初に乗り越えるべき壁はグループディスカッションだという風に思ったので、日本人とちゃんとチームを組めるような人を目指しました。そういったことを達成できないと、日本で働くのは無理じゃないかなと考えました。

面接は何社くらい受けましたか?

ユ:インターンシップはこれからがピークになるんですが、多分4、5社くらいはエントリーシートを出すと思います。初めてでコツを掴んでいないから、エントリーシートや書類選考ですでに落とされる経験がありまして、苦労しています。

落とされた理由はエントリーシートに書く文章とか、そういうことですか?

ユ:かなり工夫をしなくてはいけないんです。留学生ならなおさらです。こういう風に書かないと人事部の人にちゃんと読まれないというのがあって。本を読んで、勉強して、就活やったことのある先輩に話を聞いて、自分で書いて、日本語ができる人に文法的な間違いを直してもらってから出願、という感じです。難しいですよ。

すごい時間かかりますよね。

ユ:そうですよ。限られた字数の中で自分個人のイメージを相手に伝えなきゃいけないから難しいです。

坂本龍馬のように、歴史的になりたい。

先ほど貿易の話が出ましたが、貿易以外でやってみたい、働いてみたいことってありますか?

ユ: 僕はどちらかというと、違った文化の人とお話さえできればどの仕事でもいいんじゃないかと考えています。職種にはあんまりこだわっていないというか。

日本ですでに働いている海外の人に質問できるとしたら、聞いてみたいことはありますか?

ユ: 日本文化の中で出世するために、馴染むだけじゃなく、日本人以上に活躍するにはどういった方法やコツがあるのか聞きたいですね。一人でやっていくのはかなり難しいと思う。

ほかには何かありますか?

ユ: 日本に留学した外国人には、就職が決まって働いていて国籍を変える人がいるんですよ。いまのところ僕はやっぱり自分の国籍をずっと残したいと思っているので、どういったきっかけで帰化するのか聞いてみたいです。

ユさんはずっと日本で働きたいですか?

ユ: 絶対にこうしたい!という考えはないですね。働いてみてから考えます。

日本で叶えたい夢はありますか?

ユ: 坂本龍馬みたいに、日本と中国を仲良くさせるみたいなことですかね。

日中の架け橋ですね。

ユ:そうですね、そういった人になりたいですね。
経済に結びつくんですね、坂本龍馬のやっていることは。2つの藩に同じ利益をもたらすことをきっかけとして握手させるような。彼のように歴史的になりたいです。

取材を振り返って...

ミレニアム世代と呼ばれるユさんにインタビューできたことは本当に良い経験でした。
私が長く願っている事を感じる時代もやって来るのではないかという希望を久々に体感したからです。中国にもたくさんの偉人がいる中、明治維新に大きく貢献した坂本龍馬の名前を出して彼のように「日本と中国」の架け橋になる人になりたいとそういう彼に、大きな改革を起こす前触れのようなものを感じました。
いつか彼の話してくれたようにミレニアム世代が中国の政治にも大きく関わるようになると新しい日中関係が生まれるのだと思います。
そんなミレニアム世代が今多く日本に留学しているのだということを今一度考える時なのかもしれません。

取材日
2017年10月21日
インタビュー
玉城ちはる(EACH理事)

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